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2010.10.03

「寛解」と「受容」     posted by P.O. Box 218

「寛解」(かんかい)

という言葉を聞いたことはありますか?医学的な表現なので普段は滅多に聞かない、使わない言葉だと思います。

 

癌などの病気を治療を受けている場合、再発の様子を見る期間は約5年と言われています。その期間を過ぎれば、問題が無いだろうというステージ、つまり表題にある寛解となります。ご参考までですが、再発の可能性がゼロになることが無いので、通常の病気で使われる「完治」という言葉使われません。

 

2002年10月25日、もう少しで8年前になりますが、左顎の下に出来た腫瘍の摘出手術を受けました。術前の細胞診断(”細胞診”)で問題無しと言われていたので、気持ちを楽に手術を受けたの覚えています。1人で前日の24日に入院、翌日の午前中に手術は始まりました。全身麻酔を受けたので、手術が大変だったとかは全く記憶に無いのですが、目が覚めた時にには口呼吸を補助するもの股間に排泄物のためのチューブが通されていました。

 

手術後直ぐにより詳しい細胞診が行われました。手術を行った翌日だったと思いますが、家族を呼ぶように言われ、会議室みたいな場所で告げられたのが、「中悪性ホジキンび慢性リンパ腫」(だったと)の第2ステージと告げられました。分かり易い言葉で先生が説明してくれたんですが、「血液の癌」。

 

正直、冷静でもなく、取り乱したわけでもなく、「嘘?自分がこの年齢で癌に?・・・」という言葉が頭の中で繰り返されるだけ。口から出たのは「死ぬんですか?治るんですか?」という言葉。先生は適切な治療を受ければ、データとして生存率として75%だと明確に答えてくれました。

 

家族の支えや多くの友人、同僚の励ましもあり、目安の5年も無事迎えることができ、寛解の状態となりました。感謝、感謝、ただそれだけです。

 

治療中に毎晩眠る前に聴いていた曲があります。Ficnhの ’What It Is To Burn’です。気持ちを揺さぶるほど激しく、ダイナミックでドラマティックで自分の気持ちを投影していました。明るい希望に満ち溢れた曲ではありませんが、私を救ってくれた大事な曲の1つであることは間違いありません。

 

 

「受容」

読んで字の如く「受け入れる」ことです。言葉にすると凄く簡単に思えますが、悪いことは人間受け入れるのに時間が掛かるか、拒絶したくなる傾向があると思います。

 

自分の病気から1年も経たない2003年8月のことでした。自分の治療も半年という短い期間で終了し、定期健診のみに変わって4ヶ月が経ったで、元気になりアメリカ旅行へ向う当日の朝に母親から電話がありました。

 

脳に腫瘍があるから手術を受けることになった、と。

 

自分の病気の時は信じられないくらい冷静でいれたんだんですが、その時は頭が真っ白になり、動悸が激しくなり、苦しさが体中に広がった感じでした。アメリカ旅行のスケジュールを確認したら、成田に到着して直ぐに九州へ飛べば母の手術日に間に合うことが分かったので、直ぐにチケットを購入しました。

 

成田から母が入院している病院に着いた時には手術は終了し、ICUで母は眠っていました。頭にはチューブが繋がっていたのを鮮明に覚えています。先生の根気ある手術の結果、奇跡的に体に障害が出ることはありませでした。しかし、腫瘍ができた場所が、場所だけに治療が1番大事で、難しいものだということは家族は全員理解していました。病名ですが、病理検査の結果、まさかの悪性リンパ腫。

 

一緒に暮らす家族は母のために体に良いサプリ、水など色んなものを調べて、取り寄せていました。しかし、化学療法の段階で思うような結果が出ず、放射線療法で決断を迫られることになったのです。

 

脳に影響が少ない部分照射、再発を可能性をより低くするための全照射。全照射とは脳全体に放射線を照射することで、副作用として脳の萎縮も考えられるとインフォームド・コンセントがありました。年齢のことも考えれば再発、再手術はより危険だと判断し、全照射を選択しました。

 

母は元々明るい性格で、自分の好きな日本舞踊、日本民謡の団体の会長も務めており、大病を感じさせないくらいまでに回復していました。時折、帰省、電話をしては様子を伺ってはいたのですが、物忘れも年相応の衰えぐらいのレベルだろうと思っていました。

 

しかし、厳しい、そして悲しい現実を「受容」すべき時期が来たのかもしれません。8月のお盆に帰省して会ったばかりだったのですが、9月に電話した際に「いつ帰ってくるんの?お盆?」と聞いてきたのです。直ぐに先月帰って会ったばかりだと伝えましたが、記憶と時間軸がかなり曖昧になっており、信じたくはないですが、認知症の初期症状ではないかと思えました。

 

好きな人、家族に昔のままの元気な姿でいて欲しいと思いますが、それは無理な話。これから起こることを全て受け入れ、対応していく覚悟が求められるのでしょう。

 

 「寛解」と「受容」、凄くシンプルな言葉ですが。10月になると重く心に響く言葉です。

     

 

 

 

 

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